筑波大学漆原研究室(生命環境科学研究科・発生ゲノム情報研究室)
あるときは単細胞、またあるときは多細胞。そんな生物がいるって知っていますか。細胞性粘菌です。なぜ、そのような生態があるのか、その発生のメカニズムをゲノムレベルで研究しているのが、筑波大学漆原研究室です。明るい雰囲気の中、活発な議論が交わされています。この研究室に所属する大学院博士課程の石田賢太郎さんは「生物の魅力を存分に感じることができて、たいへん楽しいです。」と語っています。
こんな研究をしています
?@ゲノム解析を用いた発生を制御する遺伝子ネットワークの解析
細胞性粘菌は単細胞と多細胞の状態を行き来するユニークな生活環をもっていて、多細胞体制をとる最も単純な生物とされています。細胞性粘菌の発生に関わる遺伝子を解析することによって、哺乳類のような高次な多細胞体制が構築されるために必要な基本的遺伝情報を知ることを目的としています。
?A有性生殖過程における細胞識別と融合の分子機構に関する研究
受精のメカニズムを分子レベルで解明することをめざした研究をおこなっています。このために、分子生物学的な実験をおこないやすく、人為的に誘導可能な材料として細胞性粘菌を用いています。
細胞性粘菌ではオス・メスタイプの性の他に2つの性があり、有性生殖の原始型と考えられるため、有性生殖機構の進化を知る上でも興味深いです。
研究者よりひとこと〜漆原秀子さん(筑波大学教授)
研究で面白かったこと
細胞性粘菌の研究を始めた最初の年、細胞の融合を阻害してみようと思って細胞膜を破砕したものを加えたら、細胞が死んでしまいました。こういう予想していない結果が出る点です。もちろん、そのままではストレスがたまるだけですが、原因を突き止め、そこから新しいことがわかるというパターンになると、本当にわくわくするものです。自然の謎に対してこちらが部分的ながら勝利するわけで、これが研究の楽しさかなと思います。
大変だったこと
1996年に細胞性粘菌cDNA(*)の解析チームでデータベースの構築・解析を始めたことです。まだ生物の分野では、大量のDNA塩基配列情報をコンピュータ処理する方法論は普及しておらず、サポート体制もありませんでしたので、何をどうすればよいのか皆目見当がつきませんでした。情報処理の専門家の話す言葉が当時はほとんどわかりませんでした。今思えばずいぶん恥ずかしい会話をしていたに違いないと思います。
(*)cDNAとは、メッセンジャーRNAをDNAにしたもの
研究室に遊びに来ませんか?
この研究室では、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)やSPP(サイエンスパートナーシッププログラム)を通して高校の生徒への指導にも協力しています。「ゲノム広場」という一般向けのイベントにも出展し、普及活動にも力を入れています。本気で研究をしたい高校生は、ぜひ研究室を見学してみてください。
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