科学コンテストの教育的効果

科学コンテストの教育的効果

進藤 明彦(岡山県立岡山一宮高等学校 理数科主任)

 児童・生徒が科学・技術の研究活動を通して得る力には、目を見張るものがあります。1年間、粘り強く研究活動に取り組んだ生徒とそうでない生徒では、 明らかに大きな差が生まれます。
観察、調査、実験等を行いその結果を分析することは、科学的なものの見方、考え方(論理的思考力)を身に着けることにつながります。これは、学校の理科の授業で身に着けるべき最も根幹の能力です。例えば、「見る」と「観察する」 は、似て非なるものです。道端にタンポポが生えているとします。「見る」 では、タンポポに似た黄色い花が咲いていても、タンポポが咲いていると認識してい るかもしれません。「観察する」というのは、花や葉の形態,周りの環境等、その内容がどのような意味を持っているかも含めて,主観を交えず客観的に捉えることです。
こうした力は、将来、研究者として活躍する際に役立つのはいうまでもありませんが、一般生活(例えば車を運転しているとき)や様々な職業での仕事上で 役に立つ能力といえます。また、このような研究活動を通して自分の将来の夢を育むことで、目標ができ、学習全般の意欲の向上にもつながります。
研究活動にばかり時間を費やして、受験勉強がおろそかになることを心配される方も大勢いますが,現行の大学入試の理科の出題の大部分は、実験データが表やグラフで示され、これを読み取り分析することで解答を得るものが半分以上を占めます。こういった入試問題を解くことは逆に研究を模擬的に体験していると言ってもいいわけで、子供たちが、科学・技術の研究に目を輝かせて取り組む事は、将来的に非常に役に立つ、よい経験につながるといってよいと思います。