メンターの世界での現状

メンターの世界での現状

村本哲哉・柴田恭幸・風間大輔(NPO法人日本サイエンスサービス)

 児童・生徒が理科自由研究・科学自由研究に取り組む際、必要となってくるのが良き指導者・相談相手です。「メンター(Mentor)」が、その英語にあたります。今回、各国の予選を勝ち抜き科学自由研究の国際大会Intel ISEFに出場した約1500人の高校生を対象に、研究をはじめるきっかけからメンターとの関わりを調査してきました。

研究をはじめるきっかけは? 日常生活や学校の授業での疑問・興味から研究に発展するケースが多く見受けられました。こういった興味がうまく研究へとつながるのは、なかなか容易なことではないと思われます。それが、学校の宿題であったり奨学金や賞を取るという目的が加わることで、より容易になっていくのではないかと考えられます。  特に海外では、大学に進学したくても学費の問題で断念せざるを得ない場合がありまが、科学フェアで優れた研究を発表すれば、大学学費が奨学金という形で無償支給されるところもあります。  また、夏休みなどに行われる科学プログラムや大学研究室でのインターンシップ等に参加することで研究をはじめるというケースもありました。
どこで研究をおこなったか? 科学自由研究を高校でおこなうケースが36.4%と最も多いということがわかります。高校生の研究となると家庭や高校で全てをおこなうのは無理な場合もあり、大学や研究所で行ったケースが合計で35.9%もありました。高校生だからといって、高校生らしさを求めるのではなく、興味関心のあることに対しては、とことん突き詰めることが可能であることがわかります。
メンターはいたか? 8割の高校生が研究を指導・助言してくるメンターがいたと答えています。
メンターは誰だったか? 最も多かったのが高校の先生で、また大学関係者は約半数でした。やはり、高校の生徒にとって最も身近なのは高校の先生ですし、その指導が必要であると言うことがわかります。また、研究のレベルに応じて、適切なメンターを探していく必要があり、それが大学関係者であったりするのでしょう。
どのぐらいの頻度で会っていたか? 毎日会っていたケースがたいへん多く、約8割の高校生が週に一度以上は会って研究の指導を受けていたことになります。これは、高校の先生がメンターとして毎日指導に当たっていたケースや夏休みにサマースチューデントとして大学の研究室などで研究をおこなうことができるためこのように多くなっていると思われます。

 ここに示したグラフは、2006年に開催された第57回国際学生科学技術フェア(Intel ISEF)出場者にNPO法人日本サイエンスサービス(NSS)のスタッフが行ったアンケート結果に基づいていま す。全1194プロジェクト中、532プロジェクトより回答を得ました(有効回答率44.6%)。回答者の出身国は、アメリカ81%、その他の国が19%でした。また、回答を得た男女比・学年比・研究分野の偏りは無いことが確認されています。