台湾の科学フェアへの取り組み

台湾の科学フェアへの取り組み

村本哲哉 (NPO法人日本サイエンスサービス)

 科学自由研究の国際コンテストである国際学生科学技術フェア(Intel ISEF) で、毎年好成績を収めている台湾チーム。その強さの秘訣を探った。

毎年5月アメリカで高校生のための科学自由研究の国際大会Intel ISEFが開催されている。ここでは、50を越える国々から1500人以上の学生が集まり、日頃行ってきた科学自由研究をポスターセッション形式で競っている。2006年大会では、台湾チームが15分野中2分野でトップの成績を収めた。この好成績の裏には、充実した研究サポート体制、先生への支援、大学受験の優遇などが挙げられる。

台湾チーム

学生への研究サポート体制
 「リサーチ・ベース・ラーニング」という研究を通して学んでいこうという取り組みは、世界中で行われている。その一環として台湾では、多くの学校で科学研究を用いた学習が行われている。特に目を引く支援体制としては、高校生に対する指導者と研究費の提供である。1プロジェクトにつき1人の大学の教授が指導にあたり、1000USドル以下の研究費も支給される。研究をしたいと思う学生は、研究計画を考え、サポートの申請を行う。採択されるのは、年間45プロジェクトに限られているが、採択されると教授から研究指導を受け、大学研究施設を使いながら研究を進めることができる。

先生のトレーニング
 全ての科学系の教員が研究に精通しているとは限らないため、いつも学生と実際に接している高校の先生に対する支援も必要になってくる。そのために、夏休みに2日間のトレーニングを行っている。ここでは、単なる教育のみではなく、利用可能な大学施設の情報提供などにも力を入れている。ここで学んだスキルは、実際に高校生の研究指導に生かされ、科学フェアで多くの研究プロジェクトが発表されている。

大学入試の免除
 台湾からIntel ISEFへの参加枠は、最大で9プロジェクトある。出場者には、アメリカで行われる大会での発表指導も試みられている。Intel ISEFにおいて賞を受賞すると、大学入試の免除という特権が得られる。受賞者は、国立私立を問わず、台湾国内の大学を自由に選ぶことができる。進学可能な分野は、自分の研究分野と同じ学部に限られるが、受験戦争が叫ばれる台湾において、これは大きな特権である。

李教授(右から2番目)と筆者(右端)

実際に指導に当たっている教授のコメント
 国立中央大学の李教授は、高校生の研究指導を積極的に取り組んでいる先生の一人である。「大学生になってからではなく、高校生にも科学研究を体験してもらい。感受性の豊かな、可能性を多く持つ学生をいかにやる気にさせ刺激していくかは重要なこと。その中で、Intel ISEFでの受賞についても話し、モチベーションを高めることを意識している。」と話す。