科学自由研究への保護者の関わり
久家 光雄(広島県立観音高等学校 教頭)
「夏休みの宿題に科学自由研究が出てしまった。さあ、どうしよう。」という悩みが多く寄せられます。子供と科学自由研究をするとき、どういう点に気をつけたらいいのでしょうか。
子供の科学自由研究を見るときのポイント
子供の科学自由研究を見るときに一番気をつける点は、「干渉」「放置」をしないという点です。どうしても夏休みの宿題だからちゃんと終わらせなくてはと思い、子供の自主性を無視して干渉しがちです。しかし、そこはぐっと我慢して、その夏に終わらなかったものは、次の夏にやればいいといったぐらいの気持ちで接してあげてください。だからといって、子供を放置してしまうのではなく、科学研究という話題を介して、子供との会話を楽しみ、子供のレベルにあわせた情報提供をしてあげてください。
具体的なアドバイスの方法
研究をはじめる段階では、「Yes」「No」で答えられる形のテーマに置き換えてあげると良いでしょう。ただ、「メダカの観察をしてみたら?」とアドバイスするのではなく、「メダカには縄張りがあるのか、ないのか?」といったテーマにすることにより、子供にもある程度目標が見えてきます。そうすることで、子供の興味を続けさせるのもポイントです。
研究手法はどうするか
メダカを大きめの水槽で飼い、一定時間内に行動している範囲をトレースしてやります。水槽の正面に碁盤の目のように糸をはるのもよいでしょう。個体ごとに行動する範囲に決まりがあれば縄張りがある、決まりがなければ縄張りはないという結論が導き出せるはずです。
さらに、縄張りがあるなら、さらに水槽の横から観察することで縄張りの範囲が立体的に示せます。この行動データにオスメスの違いや体の大きさの違いが入ってくると、さらに議論を深められるでしょう。
データがとれたらどうするか
しっかりと議論、協議をしてあげてください。その際心がけることは、まずは聞くことです。「これはどういうこと?」と聞くことで、子供にしゃべらせ、子供に考えさせてください。時に親が気づかなかったことを考えていたときには、ちゃんと気がつかなかったことを言ってあげましょう。また、子供なりの間違った概念を正してあげることも大切です。最後には、その議論、協議をレポートにまとめれば、宿題の完成です。
科学自由研究を通して望める子供の成長
「科学自由研究より受験勉強を」というのが保護者としての本音だと思います。では、若いときに鍛えておくべき力とはどのようなものでしょう。科学自由研究を通して、以下のような成長が望めると期待されます。
■書くちから
宿題をまとめるにはレポートを書かなければなりません
■読むちから
レポートをまとめる際には本を読むことが必要ですし、図鑑を読む必要もあるでしょう。
■分析するちから
得られた実験データを客観的に分析し、結論を導き出さなければなりません
■論理的に展開するちから
人に研究を理解してもらい、人を説得するには論理的に話を展開する必要があります
この内容は、広島県科学賞の審査員や科学自由研究の指導者として活躍されてきました久家光雄先生(広島県立大門高等学校教頭)が広島県福山市立高島小学校にて話された内容をもとに、日本サイエンスサービスがまとめました。